霧崎鋭は幕末志士の夢を見るか?

 

1 霧崎鋭という人

 

霧崎鋭という人間が好きだ。

頭がよくて、飼っている猫を溺愛していて、生活が雑で、そのくせ変なところで潔癖で、友達想いで、弱くて、強くて、なによりゲームが大好きな30代。

それだけの情報しか知らないのに、私は彼のことがどうしようもなく好きで仕方ない。

 

顔は知らない、手も知らない。今までどういう生き方をしてきた人で、普段どういう生活をしていて、どういう気持ちで毎日を過ごしているか。彼が考える未来はなんなのか。私はそれらすべてを知らないし、きっと今後も彼が与える情報以外は全く知ることなく暮らしていく。それでも、なにも知らなくても彼のことが好きだ。できることなら彼には毎日笑顔で楽しく永遠に生きていてほしい。本気でそう、願っている。

 

霧崎鋭という男が坂本龍馬なりパニ山なりテリ山なりを演じる時、私は大体いつも気が狂う。

 

例えば、彼が放送をしていただけで何もかもが嬉しくなりデートをドタキャンして恋を失った。GW中の騒動時は気が動転しすぎて酒を70缶飲み、危うくアル中になりかけた

 

そのくらい、頭がおかしくなってしまうくらい彼のことが好きだ。どうして好きなのか具体的なところをあげたらきりがない。けれども決定的に好きになった理由はもう忘れてしまった。強いていうなら「彼が推しだから」としか言いようがない。

 

2 幕末志士が大人を見せた

 

春先に私は「幕末志士は子供時代の夢を見るか?」という文章を書いた。

あれから誰もが予想もしなかった未来が訪れ、幕末志士は怒涛の展開を迎えた。

 

「大人な部分を見せちゃだめだと思う」と言っていた彼は、ある日突然相方の不調の報告とともに、二人が今の現状について悩み続けていたことを吐露した。そして二人は心の一番柔らかい部分を視聴者に洗いざらい見せてくれたのだ。そんなこと、今まで一度もなかったのに。

 

長年相方だった西郷は卒業し、今では新たな名義で活動を行っている。坂本龍馬を名乗る男は、穏やかで朴訥とした札幌という街で一般人に戻ることを選ばなかった。「霧崎鋭」ではなく「坂本龍馬」として、新たな相棒中岡慎太郎と共に活動を続けることを選んだ。成長した西郷がいつか帰ってくるその日まで。

 

正直なところ、彼が約一か月もの空白の期間を経た末に、西郷が卒業しても尚幕末志士は続けること、坂本龍馬をまだ演じてくれることを告げてくれた時驚いた。

 

チェックメイト時「この人からインターネットを奪わないでください」と西郷に言われるほどに電脳世界を愛している彼のことだ。なにかしらの名義でどこかで活動してくれるとは思っていたが、心の中では坂本龍馬はもうこれっきりなんじゃないかと思っている自分がいた。『幕末志士』は、『幕末』を坂本、『志士』を西郷が背負っている運命共同体コンビであることは誰もがわかっていたからだ。けれども西郷の「続けてほしい」という意思を引き継ぐような形で、霧崎鋭は坂本を演じることを選んだ。

 

それは誰もが悲劇だと思いこんでいた最終回が、誰もが祝福したくなるような優しい終わり方だったことと関係しているように思う。

 

3 泣きたいほどにハッピーエンドだった

 

ゴールデンウィークに放送された忘れもしない最終回。

なじみのあるゲームを楽しんでいる彼らはどこまでも面白く、どこまでも楽しそうで、笑いが止まらなかったことを今でも鮮明に覚えている。

またその後愛にあふれた記事が、視聴者の間で話題になったことは記憶に新しい。

 

realsound.jp

 

この記事の「また会いたい2人の友がいる」という言葉に共感した人も多いと思う。私は放送を見て泣き、この記事を見て泣き、さらに二人を想ってもう一度泣いた。彼らは私たちが思っている以上にどこまでも親友で、決して悲しい終わり方ではなかった。

 

最終回で特に印象的だったのは「お互いがお互いを尊敬し、思いやりをもった」終わり方だったことだ。それから、どこまでも笑顔であったこと。サムネイル通り幸せで、二人のこれから進む道を心の底から祝福できる最高の放送だった。二人の息はいつも通りにぴったりで、いつも通りに笑みがこぼれるものだった。泣きたいほどにハッピーエンドだった。

 

おそらく幕末志士は彼にとってきっと大事な宝物だ。

というのも『キリザキ君は。』で、キリザキ君が必死に砂のお城を崩れないように頑張ろうとするシーンがある。あれはシナリオライターである霧崎鋭本人の幕末志士への率直な気持ちだったと私は思っている。

彼は数々のゲームやSNSで、ある時は『パニ山パニ男』、ある時は『陰』、またある時は『マリオの鼻油』と記しきれないほどのキャラクターと城を築き上げている。中でも最も大きな城は間違いなく『幕末志士』だ。最近周りで流行ってるからみたいな軽いノリではじめたであろう実況がここまで自分の人生を左右するとは、若い頃の二人は思いもしなかったに違いない。霧崎鋭という人物が安定した仕事を捨てても、親戚との縁を切っても、名前を改名してまでも守りたかったもの。それこそが幕末志士という宝物であり、大親友と共にいられる世界だったのだと思う

 

4 霧崎鋭は幕末志士の夢を見る

 

彼はよく西郷との関係性を「セリヌンティウスも真っ青な仲」と言っていたが、今の状態はどこか『走れメロス』に似ている気がする。大親友を信じて待ち続けるセリヌンティウスと、目標に向かって走り続けるメロス最終回で隣にまた立てるよう頑張りたいと言っていた西郷と、幕末志士という場所を守り続ける坂本。その姿が重なってしまうのは私だけだろうか。

 

霧崎鋭は幕末志士の夢を見続ける。そう、私は信じている。

新たな相方である中岡と共に、あるいは新キャラのテリ山で。

西郷が戻ってくるかどうかはわからない。けれども、西郷にとっても彼にとっても幕末志士は宝物だったと私は思う。それだけで、私は彼が幕末志士という舞台で生涯実況を繰り広げてくれる気がしてならない

 

 

きっと彼は世界のエンターテイナーとして、これから私たちを何度も笑わせ、何度も泣かせ、何度も驚かしてくれるだろう。これからどんどん変わっていく新たな幕末志士を考えるだけで、私はとてもわくわくする。何度でもこちらの予想を裏切ってほしいと願ってしまうのだ。

 

坂本さんへ。

いつまでも世界のエンターテイナーとして、世界中を驚かしてください。

あなたとあなたの取り巻く世界と友人が、私はどこまでも大好きです。