幕末志士は新時代の夢を見るか?

 新しい風が好きだ。


 春に咲く花、新発売の商品、おろしたてのコートがふわりとふくらむさま。知らない世界、なじみのない文化、はじめての光景。いつも通りの代わり映えしない日々と慣れた作業におそろしいほどの安定と安心を求める一方で、目新しさに惹かれてしまう自分がいる。一歩を踏み出す前向きさがまぶしくてたまらないのだ。


 昨年度の幕末志士は「新しい」に尽きるだろう。
 卒業があった。期待の新人がやってきた。体制が変わった。ソロ配信もはじまり、YouTubeでの活動も精力的になった。グループでの配信もたびたびするようになった。それでもなお"新しい"をとりいれながら、根本的な懐かしさは変わりないのが幕末志士の良さだと思う。


 坂本龍馬と相方中岡慎太郎が話すのは、学生時代のたわいもない思い出だ。そうしてソロ放送でキッズ人気が欲しいとわめきながら選ぶのは、懐かしい高橋名人のゲーム。毎日同じような生活の中で、優しい記憶とともにコツコツ編集と配信を続け"新しい"を紡いでいく。それは坂本さんらしいやり方でもあるし、同時にまるくなったとも思う。大人になった彼らしさだ。今、私たちが生配信を怯えることなく安心して楽しめるのは、彼らがこの一年おだやかに新風を巻き起こしてきたからにちがいない。そしてもちろん彼らが努力しつづけたからだ。


 一方で新人らしいフレッシュさで坂本さんを引っ張り、時に暴走するのは相方の中岡さんだ。その屈託のなさと素直さにやわらかな気持ちになりながら、変わったワードセンスに思わず笑ってしまう。その輝きはまさに期待の星だ。初心者ゆえの予想外の行動に振り回されている坂本さんというのも見ていて面白い。


 日常の一部として彼らのエンタメを享受する中で、変わらない「今日も面白かった」という気持ちとともに、ふっと風に気づく。知らなかった展開、知らなかった世界。何度も見ていたはずのコンテンツに新たな物語を見出す。未来を紡いでいくその姿勢はどこまでもまぶしく、とりどりの色で満たされている。だからこそ応援する手がとまらない。これから何度も読むことになるかけがえない小説に出会った時のような没頭感がクセになる。今も昔も変わらぬ面白さもどこまでも魅力的だ。

 

 新しい風が好きだ。

 春に咲く花、新発売の商品、おろしたてのコートがふわりとふくらむさま。知らない世界、なじみのない文化、はじめての光景。これからも変わっていく新たな風を、幕末志士という物語に加わる新たな文脈を、桜色の輝く季節とともにこれからも応援していきたい。